15年間も同じ業界に携わっていれば、おおよそその業界の将来性や所属する企業・組織の強み弱みが見えてくると思います。
今でこそ配達仕事はAmazonやギグワーク、フードデリバリー等で注目される働き方になってはいますが、私が軽貨物デビューした頃の前後数年間は暗黒の時代というか、大変イメージの悪い職種(トラックドライバーは未だに暗黒?)でした。
過去ログでも紹介しましたが、軽ドライバーが委託契約した企業に乗り込んで社員を人質に立てこもり、事務所を爆破、犠牲者まで出すといった全国的なニュースになったような事件も起きています。
この事件が象徴する、「車両を購入させるが満足な仕事が紹介されない」というような詐欺まがいの契約があちこちで行われていたことも、軽貨物運送業というイメージを悪くしていた。
当時はSNSやYouTubeなどは一般的に使われておらず、現在のように情報入手が容易ではない時代。
軽貨物の情報は多くは佐川の下にぶら下がっている元請けによるフリーペーパーの求人広告が全盛でした。
当然軽貨物の求人は「宅配」ばかり。
配達単価は当時も今もほとんど変わらず150円前後。
同じ佐川の仕事なのに元請けによって数十円の単価の違いがあったのは、各元請けがどのくらいガメツイかの判断材料にもなっていたのだが、いつのまにか単価が横並びに(笑)
銀行金利や携帯キャリア料金みたいに談合を疑うほど条件を揃えようとするのは日本社会の悪いところですな。
で、この15年の間で軽貨物の働き方はどう変わってきて、今後はどうなっていくのか?
業界や業種の変化と将来性はどの職種にとっても大事。
目先の待遇や条件で仕事を選ぶべきではないといつも言っていますけど、あらゆるサイクルが短くなってきている現代においてはその選定・判断基準が難しい。
ここ数年で軽貨物やフードデリバリーという働き方が人気となってきているのは、「正社員」という長期拘束と引き換えの安定が保証されない時代の流れにも影響を受けていると思われる。
正社員が安定でなくなれば「他人のルール下で拘束される」ことに懐疑的になるのはまあ自然かな。
15年前の軽貨物の求人も「週6日、8:00〜19:00、月収35万〜」みたいなサラリーマン的な内容が多く、これで車両購入や経費との兼ね合いでやるやらないを決めることになる。
まあわかりやすいといっちゃぁわかりやすいが。
普通の会社員を辞めて軽貨物始める人の多くが躓くのがこの求人内容のいい加減さ。
当初は週6を謳っていても、閑散期には稼働日を減らされることは普通だし労働時間もこんな定時みたいな感覚でいるとヤバい。
月収だって毎月上下するし、何よりも経費の多さが「思ったほど稼げねぇ」を演出する。
特に車両のローンやリース期間中は尚更です。
例えば会社員時代手取り月収30万円だった人が「軽貨物稼げそう!」と参入してくるとします。
軽貨物で月に40万の売上があったとしても、保険・駐車場代・ガソリン・メンテナンス・年金&国民健康保険等で軽く10万円を超える経費が飛んでいきます。委託先によっては謎の手数料やらを引かれることも。
これに車両ローンやリース代を加えたらどうですか?
手取り30万円の会社員と同等の収入を考えるなら軽貨物の売上は45万円以上は欲しい。
ユーチューバーで宅配で50万円以上稼ぐという人もよく見かけますが、売上であって手取りではないですから。
稼ぐ人はそれなりにガソリン消費しますしタイヤも消耗するしオイル交換の頻度も高くなり経費も多くなるので、稼げるアピールしている額面ほど稼げているわけではない。
個人的に私が軽貨物の働き方で嫌な部分は「収入」と「労働時間+経費」が比例しているところ。
単純労働に多く見られる足し算式収入の考え。
「収入増やしたければ労働時間も増やせ!」というのはまあ当たり前の論理ではあるのですが、これを当たり前と思い込み疑わないのが日本が30年も生活が豊かになれていない根本的な部分ではないかと。
軽貨物も単なる大手運送会社にぶら下がっている元請けの下で宅配するというワンパターンから、ネットスーパーが出現しPickGoのようなギグワークのプラットホーム上の働き方が出現し元請けの存在が不要となってきた。
さらにAmazonやフードデリバリーと多種多彩な選択肢も次々と生まれてきている。
働き方自体は多様化してきたのは嬉しい。
ただ、それらの配達系仕事の根幹は「数多く配達しないと収入にはならないよ!」と変わらない。
フーデリやAmazonの一部にはインセンティブ的なシステムもあるが、それが付く時には条件の悪さと引き換え的なもの。
10年以上やってスキルアップしても配達単価は一向に上がらないし、それどころか配達数だけ増やされて単価は下げるとか、見た目の売上は微増しても経費は増大するみたいなことも起きている。
ガソリン価格の上昇とかは全く反映されないので、頑張りが結果に繋がらないのが辛い。
業界の将来性としては「人の労働力」に頼りすぎていることが不安材料。
しかもその労働力に対して労働対価が低すぎるし、一向に改善する気配も見られない。
幸い軽ドライバーとして働き方の選択肢は増えてはいるが、労働対価は低水準のままだし結局は長時間労働がつきまとう。
最後には「収入」を取るか「自由」を取るかの話になりがちだが、どちらかに絞る必要も無い。
そんな究極の選択に追い込まれるから判断付かず後悔する働き方になってしまう。
せっかく働き方を選択できるのに旧態依然の悪条件に付き合う必要はないですよ。
軽貨物の進歩というより働き方の進歩を意識しましょうよ。
相手が報酬や労働時間を変えてくれることを期待するから社畜のように働いてしまう。
いつも言うように「労働者が主役」なんです。
自分の望む条件で働くことはある意味「権利」です。
自分は唯一無二のブランドなのだと勘違いすることから道は開けていける!\(^o^)/